2001年7月25日(水) 遍路29日目
結願
曇、晴
 
 今日も朝から蝉が鳴いている。四国に来て蝉が鳴いていなかった日があっただろうか。

 ずっと履いてきた長ズボンは限界に来ている。さすがに同じ物を洗濯しても履き続けて来たので仕方ないだろう。裾はぼろぼろになっている。それと又ずれで又のところの生地が薄くなって穴があきそうだ。明日が恐らく最終日。何とかもつだろう。

 朝7時、出発。あずまや旅館のおかんに挨拶をする。第87番長尾寺[ながおじ]は目の前だ。

 とうとう最後の札所、第88番札所大窪寺[おおくぼじ]に向かう。数日前に出会った遍路に
「女体山は必ず行きないさい。」
と言われていたので迷わずに山道に行く事にする。前山ダムで左に折れ、石仏群を見つつ進んでいく。人気はなく寂しい道だ。そして、山側に有る石仏の数々。これはどういったことで作られたのだろうか。丁寧に石仏の周りを掃除してある。手入れをする人がいるのだ。天気は曇で時々晴れ間が見える。

 しばらく行くと道は山道になる。登りが続いている。ここで水がなくなってしまった。補給しようにも汲むところが無い。仕方ないので地図で確認すると車道に出た所に「太郎兵衛館」というのが有るらしい。山の中なので博物館ではないようだが何かあるだろう。人がいるところ必ず水は有る。そう結論付けて我慢して「太郎兵衛館」を目指す。

 ぱっと開けて車道にぶつかった。「太郎兵衛館」ってのはどこだ。お、建物が右手に有る。あれか、ちょっと閑散として人がいないようだが建物は有る。建物に近づいて行くと手前に「太郎兵衛館」があった。なんとそれは昔「太郎兵衛館」というのがここにあったという看板だった。では、あの建物は何だ?入り口まで行くと「香川大学農学部実験実習宿泊施設」とある。がびーん、駄目じゃん。人はいないし門は閉まっている。水の補給が出来ない。道端を見てもあまり空き缶はない。ということは自動販売機やお店は近くにないってことだ(人気の無いところに自販機なんてあったら壊されちゃうしね)。時間を見ると10時5分。がっくりして10分ほど休む。水が無い。

 しばらく車道を登ってまた山道に入る。ここからの登りはきつい。登っていくと水だ。水が流れ出ている。飲んでも大丈夫なのかどうかわからないが使い捨てのコップが近くの枝に掛かっている。間違い無い、飲んでも大丈夫だ(本当に?)。喉が乾いていたのでがぶがぶ飲む。冷たい水は美味しい。ペットボトルにも補給をする。ちょっと遅いがなかなかのタイミングで水が有った。
女体山、壁
 
 
 進んでいくと急な岩山が有る。頂上まで間近だと思われる。あまりの急な道に一息ついた。フィルムを余しても仕方ないので写真を撮る。木々が生茂っているので暗くなってしまった。急な岩場が3ヶ所あった。杖を持っていないので両手が開いていて良かった。這いつくばって登らないと登れないような岩場だ。
女体山 山頂
 女体山、山頂に着いた。見晴らしが良いのかと思ったが曇っていてあまり良くない。山から突き出た岩場にこれまでかぶってきた菅笠を置いて写真を撮る。岩の先端まで行って辺りを見回した。これを見せたかったのか。本当に四国に来て良かった。女体山に登って良かった。すばらしい。

 岩の上に寝そべって空を見上げる。ここで皆、祈り、叫び、しょんべんをしてるに違いない。なんだかしょんべん臭い。これはやばいと思いすぐに立ち上がる。

 景色を堪能し、頂上より下る。ここから大窪寺までは下りだ。すぐに車道に出た。車道には「山頂まで100m」とある。これは、車道から来た人も山頂に是非行ってみるべきだ。自転車を担いで登るのはかなり無理に近いので車道を登り、ここから山頂に行くのが良いと思う。車の人も登ってみると良いだろう。
大窪寺までの山道下り山道の休憩所 誰かの金剛杖
 車道を渡り山道を下る。階段状にするための土止めの木にナンバリングされている。カウントダウンしている。この数字が0になったとき大窪寺に到着するのだろう。木々に下がっている札がこれまでと違って「結願」となっている。最後なのだ。

 これまで人のために何もしなかったように思う。山道に転がっていたペットボトルを拾う。

 山道を抜けると大窪寺に到着した。寺の裏手に吐き出されるように飛び出た。ここが最後のお寺か。杖が沢山奉納されている。それと団体で写真を撮る台が置いてある。最後なのだ。最後なのに感動が無い。ここが大窪寺なのかとしか思わない。終わったのか。いや、まだだ。一番札所霊山寺[りょうぜんじ]に行かなくてはならない。

 戻ろう、1番札所へ。

 四国八十八ヶ所総奥之院、與田寺[よたじ]に向かう。ここも他の遍路に行ったほうが良いと言われた所だ。ここには通宿があるそうだが乗り気はしない。どこかで野宿しよう。ひねくれているのだ。

 17時に與田寺に到着。朱印帳には欄が無いのでお参りだけする。夕方なので閑散としている。お参りする人は僕以外にいない。駅で野宿しようかな。まだ明るい。これから野宿の場所を探そう。

 白鳥中学校前を通過。バス停が有る。小さいし長椅子もないのでいまいちだが今日はここに寝よう。食料調達のため500mほど先にに見える大きなスーパーマルナカに行く。明日が最終日。髭はこれまであまり剃らなかったので髭剃りを買う。それと水の補給が出来ないので2リットルのウーロン茶も買う。中学校に入っても良かったが侵入するのはあまり良くないので買ってしまった。スーパーのベンチで1時間ほどつぶす。辺りが暗くなってきたところでバス停に戻った。
バス停からの眺め
 中学校の体育館では何かやっているようだ。それに、車の音がちょっとうるさい。することも無いので銀マットを敷いて転がる。バス停の外を眺める。星や月が綺麗に見える。本当に明日、帰れるのだろうか。

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