2001年7月24日(火) 遍路28日目
塞翁が馬
 
 第83番札所一宮寺[いちのみやじ]に向かう際、道を間違える。地図に載っているお店の位置が間違っているので当てにしてはいけない。それに、遍路道のシールもおかしい気がする。結局、到着するのに一宮寺に1時間近く多くかかった。歩いていて道を間違えるとへこむ。ここは、何処だ?、どちらに行けば良いんだ?、まさか戻るのか?はあ、歩く速度が遅くなり、うな垂れる。

 街中を抜け、第84番札所屋島寺[やしまじ]へ。山の上に有るお寺。同じ道を戻ってくる。麓の茂みの中にリュックを隠す。民家に声を掛けて置かせてもらおうと思ったが、人が見当たらない。盗られる事は無いだろう。道を登っていくと何だかわくわくする。この先どんな道なのか、何が見えるのか期待してしまう。この道は幅も十分有り、以前は車道ではないだろうか。舗装もしっかりしている。車が入れないように所々段差を付けている。地元の人が数人ハイキングしている。きついのが朝の失敗を忘れさせてくれる。屋島寺の境内は広い。山門からの眺めが良い。

 同じ道を下り、第85番札所八栗寺[やくりじ]に向かう。お寺の位置が良く分からず歩く。おじいさんが話し掛けてきて
「八栗寺はこっちだ、付いて来なさい。」
本当かよ?大丈夫か?じいさんやっと歩いているって感じだぞ。でも、大丈夫かな。
「はい、お願いします。」
おじいさんは85歳。聞かれもしないことをどんどん教えてくれる。昔、良く歩いたから今も歩けるんだ、軍隊に行って軍艦が6隻沈んだけど死ななかった(まじかよ)、右手にはB29の25mm砲の破片が入っている、この辺は石の産地だから石屋が多いんだとも言っていた。いつの間にやら、前方に山が見える。山を見ても
「あそこの剥げた部分は地震で崩れたんじゃ。」
すかさず言ってくる。山田屋(うどん屋)が見えると
「昔は酒屋じゃった。」
やるな、じいさん。登り口が見えた所でおじいさんと別れる。

 八栗ケーブルの待合室にお土産屋があるので覗いてみる。絵葉書を買おうと思うが高い。一息入れて登ることにする。急な道を登る。隣をケーブル電車が登っていく。なんだか卑屈な気分になってきた。やっとのことで登る。納経所でタオルと飴をお接待して頂いた。良い寺だ(笑)。
八栗寺からの下り
 JR志度駅[しどえき]周辺は栄えている。これは、旅行会社があるかな?駅と併設に「JR四国ワーププラザ志度」があった。高速バスの予約、発券をする。手数料100円は安い。高速バスはほとんど満席の状態だった。危なかった。甘く見過ぎた。これで、家に帰ることが出来る。家に帰るんだ。

 第86番札所志度寺[しどじ]

 夕食の為、うどん屋「めんくい」に入る。ぶっ掛け冷やしうどん。シャーベット状の汁がうどんに掛けてある。こんなうどんは始めてだ。勘定を払って出るときに、うどん屋のおじさんに、
「野宿するのかい?」
調子を合わせて
「はい、そうしようと思います」
「野良犬には気を付けなよ、お遍路さん」
真顔で言われたので本気でやばいのかな。
 外に出てると駐車場に宿の看板があった。今日は、この宿だ。第87番札所長尾寺[ながおじ]の前にあるそうだ。お参りは明日朝一番に行けば良いだろう。あづまや旅館にPHSで電話をして素泊まりをお願いする。快く引き受けてくれた。
夕方、自分の影
 
 
 ふと、横を見ると傾いた太陽の光により自分の影が田んぼに長く伸びている。これは、良い絵になるかもしれないと思いシャッターを切った。この影の右側が前、左側が後ろ。リュックから下に伸びている影は銀マット。リュックの後ろに括り付けてぶら下がっている。この格好で僕は歩いている。稲は青々としているが写真では実っているように見える。これは夕日の加減で金色に写った。実際に目で見ても金色の田んぼが見えた。美しい。
 宿に向かっている途中、桃の看板を発見。アイスクリーム食べたいなぁと思いつつ通過すると
「お遍路さん、接待しますので待ってください。」
と中学生くらいの女の子が声をかけてくれた。店番をしていたのかな。桃のアイスクリームをお接待していただいた。冷たく、甘すぎもせず本当に美味しい。食べ終わった後、感謝のお礼として納め札を渡す。

 それからしばらくして後ろから自転車に乗ったおじいさんにモナカのアイスクリームをお接待していただく。暑いので全然飽きもせずすぐに食べる。美味しい。抹茶の味がうまい。

 あずまや旅館はお寺のまん前だった。まさに門前。入ると旅館という民宿だ。旅館というと豪華な響きだったがいつのころから変わった。旅館とは民宿のことだ。全部が全部そうとは言えないがここはそうだ。元気な女将さんというよりおかんだ。素泊まりなので料理は無かったが、冷たいオロナミンCとタオルをお接待していただいた。そして、宿代を払ったらその中から500円お接待していただいた。本当に申し訳無いことだ。宿代で生計をたてているのにその中から頂いてしまうと申し訳無い。これまでも幾度となくこうしてお接待していただくと感謝の気持ちで一杯になる。お世話になった人々の想いを届けることが出来るのかどうか、僕なりに精一杯お返しをしたいと思う。

 朝一番から道を間違えてとことん落ち込んでいたが歩くにつれて気分は持ち直してきた。そして、多くの人との会話、お接待により根本より立ち直った。朝の気分が払拭された。お大師様ありがとうございます。お接待していただいた方、本当にありがとうございます。皆様の気持ち、物、全て背負って参ります。

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