2001年7月15日(日) 遍路19日目
宿遍路へ
雨、くもり、雨
 
 目が覚めて、缶コーヒーを買う。贅沢になったな。朝食はパンの残りを食べる。

 朝になって見るとお堂の中は汚い。昨日は全然気にならなかったが余裕が出てきて辺りが見えてきた。箒があったので布団を畳んで中を掃く。虫の屍骸などがあって幻滅する。掃除して、後の人が気持ち良く使えれば良いだろう。お堂の管理しているおじいさんとおばあさんに御礼を言って出発する。

 歩き出したらすぐに雨が降ってきた。カッパを着て歩く。靴はしょぼいし、へたっているので靴の中がべちょべちょ。ぺらぺらな靴だから浸水するのも早いが乾くのも早い。それだけが救い。しばらくして道を間違えたが近所の人に声を掛けられ道を教えてもらう。

 雨だと気分は沈む。野宿はしようかどうか考えるが一瞬にして答えが出る。もちろん、宿だ。宿は良い。風呂は有るし布団は有る。その場所に居ることができる。その安定感が良い。お金に物を言わせているのですっきりはしないが誘惑には負ける。なまじお金がると駄目になってしまうのか。地図でお寺を確認すると第45番札所岩屋寺[いわやじ]から戻ってくる道になっているので第46番札所大宝寺[だいほうじ]あたりの宿に入りたい。なぜなら荷物を置いて岩屋寺に行って帰って来られるから。楽することばかり考えてしまっている。雨が止む。

 大宝寺は山門が立派。お参りを済まして納経所に行くと人が数人並んでいる。団体でもないようだし、納経の請負?商売している人かなと思うが違うようだ。見ると張り紙がしてあり13時まで食事をするので納経は無理ってことが書かれている。物にこだわると、こういうことがある。そのまま並んで待つことにする。そうしているうちに続々と人が集まってきて20人以上が待つありさま。しかし、悪いことばかりでなく良いこともある。周りと話す時間が出来た。おばさんは4回目で納経帳に重ねて押してもらっているのを見せてもらった。それよりも更につわものがいた。おじいさんなのだがうれしそうに自慢話をしている。こういったやからは嫌われると気が付いていないのが悲しいところ。聞くとすでに回るのが100回を超えているらしい。納経帳は真っ赤になっている。何がなんだかわからない。「初めは25回で納経帳を変えてたんですけどね・・・このくらいになると重くなるんですわ・・・」と聞こえてくる。それほどまでに願うことがあるのか。そこに想いはあるのかい? 壮大かつ贅沢なスタンプラリ、ボケ防止には良いのかな。僕は、20分くらい待たされやっと納経。1分1秒で納経所に駆け込む身としては悲しいばかりだ。

 山道を行くと雨が降ってきた。道が悪くなり引き返す。舗装道路を行く事にする。トンネルを抜けると向かいから若い女性遍路が歩いてくる。挨拶をして通過。同じ人に何度も出会う機会は僕には少ないようだ。何人にも挨拶してもそのまま分かれてしまう。一緒に歩きたいとは思わないがお互いあきらめずに歩いているんだよっていう姿が見たい。出会わないのは、朝早くから夕方まで歩いているのが原因なのだが。

 途中のバス停が異常といえるほど立派。ちょっとした山小屋だ。しかし、宿に泊まると決めていたため野宿しようとは微塵も思わない。国民宿舎「古岩屋荘」を発見。温泉という単語が僕を引き付けて放さない。直接聞いてみると泊まれるとのこと。受付に荷物を預けて岩屋寺に向かう。

 そもそも、遍路を知ったきっかけはなんだろうとあいまいだったが岩屋寺という発音で思い出した。坂東真沙子の「死国」という本だ。たぶん間違いない。歩き遍路としての内容は全然、現実と違うので何も参考にならない。ただ遍路ということを知るきっかけを作ってくれた本だ。

 しばらくするとトンネルが開通している。古岩屋トンネル。これにより多少早く岩屋寺に到着できる。地方では公共工事が蔓延しているんだなと日々実感している。岩屋寺は階段をしばらく登らなくてはならない。下の茶店で声を掛けられ、それに答えながら歩く。一口の羊羹を頂く。荷物がなくなった僕には快適そのもの。がんがん登ることができる。ごぼう抜きにしながら登る。下ってくる人からも挨拶され、もちろんそれにも答える。荷が無いっていうのは極楽だ。

 お参りを済ませて納経所の脇でくつろいでいると下からやっと登りついた人が声を掛けれてくれた。一緒に登って来たのにあっという間にぶっちぎってしまった人だった。こちらは若いし、旅で鍛えられて来たので仕方ないだろう。

 下の茶店で生姜湯を頂く。ぬるく不味い。匂いのきついものも僕は苦手だ。

 トンネル付近で前方を歩いている人がいる。遍路か、これは追いつかねばという思いで急いで歩く。追いついて話をする。60代くらいの夫婦だ。区切りで回っているそうだ。歩くことにことさらこだわることも無く自分のスタイルで回っている。岩屋寺に来るとき路線バスから僕を見たとのこと。宿は大宝寺付近に予約して荷を置いてきているそうだ。宿の人に山道の往復は大丈夫って言われたがこの雨と険しさで舗装道路を歩いて宿に帰っているとのこと。確かに雨の山道、峠越えは危ない。国民宿舎の前で別れる。

 国民宿舎の目の前に休憩所のようなところが有り、寝ることが出来そうだ。快適そう(快適とは普段の快適からは程遠いが)。もう宿を取ってしまったため変更しようが無い。全部、舗装路で来れば分かったのかもしれないが途中、山道に入って来たので見つけられなかった。ちょっと残念。

 風呂は広い。期待したほどではなかったが温泉だと思うとうれしい。コインランドリで洗濯、乾燥できる。時間が間に合い夕食を頼んだ。旅館料理と代り映えも無く可も無く不可も無し。明日の朝食を持っていないので売店で物色するが良い物無し。しかし、食わないと歩けなくなるし弱るので仕方なくポテトチップを買う。

 夜、大雨。音がうるさいくらいに降っている。テレビのニュースで人体展を行っているのを紹介している。なかなかグロイので行ってみたい。新居浜の県総合科学博物館とやらだ。通り道にあったら行こうと心に誓う。天気予報ではしばらく天気が悪そうだ。

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